第1回ベクター課題 (2002年11月7日提出)
![]()
鷲崎 俊太郎(経研D3)
考察
図1は、1990年の国勢調査をもとに、東京23区における単身世帯数の総世帯数の占める比率を、町丁目別に表したものである。
図1を概観してわかることは、次の点にある。
第1に、東京では、単身世帯の分布が「西高東低」に見られる。この境界は、東海道本線と東北本線(俗に京浜東北線)を結ぶ線上に位置する。杉浦章介は、このラインより東の地域を「下町」、西の地域を「山の手」とする区分が、明治期以降、戦間期まで一貫して存在したことを明らかにした(2)。こうした「下町」、「山の手」の区分は、バブル期を経た1980年代にも継続していたことが理解できる。
図1のPDFファイルは、こちら。
第2に、単身世帯比率の高い地域を具体的に挙げてみると、渋谷区、新宿区、豊島区といった新都心を含む区部、新都心より西部に位置する中野区、杉並区、世田谷区となる。しかし、その地域は、必ずしも当該の行政区全体に広がっているわけではない。渋谷区の場合、山手線内では単身世帯率が極めて低い。
こうした結果に強く影響を及ぼしているのが、鉄道路線および駅である。図1より、渋谷・新宿・池袋をターミナルとする東京西部への郊外路線とその停車駅、および単身世帯率の高い地区とをまとめると、以下のとおりとなる。
| ターミナル駅 | 単身世帯率が高い 地区を持つ 西限の駅 |
|
| 東武東上線 | 池袋 | 大山 |
| 営団有楽町線 | 小竹向原 | |
| 西武池袋線 | 桜台 | |
| 西武新宿線 | 新宿 | 都立家政 |
| JR中央線(3) | 西荻窪 | |
| 営団丸の内線 | 荻窪 | |
| 京王線 | 千歳烏山 | |
| 小田急線 | 千歳船橋 | |
| 京王井の頭線 | 渋谷 | 明大前 |
| 東急新玉川線(4) | 駒沢大学 | |
| 東急東横線 | 学芸大学 |
このように、単身世帯は優等列車が通過する駅周辺に居住していることが明らかとなる。こうした背景には、ターミナル駅から20分以内で、低価格な賃貸物件が揃っているからと推測することができる。
第3に、単身世帯率の地域変化を時系列で見てみよう。
図2は、95年における単身世帯数の比率である。実は、図1と比較して、図2がほとんど変化していない様子が窺える。単身世帯率の増加が顕著に見られるのは、新しく構築された台場周辺に限られる。
言い換えると、単身世帯の居住は、バブル経済が崩壊して不況が訪れ始めた90年代前半期においても、バブル期にあった80年代後半期とも変化なく、不況が世帯居住に影響を及ぼすとすれば、大企業による設備投資の縮小と人材面でのリストラが大々的に実行された90年代後半期以降と考えられる。
図2のPDFファイルは、こちら。
【註】
(1) 泉麻人『東京23区物語』新潮文庫、1988年、139-42頁。 (本文に戻る)
(2) 杉浦章介「戦前期東京「山の手」における階層分化と地域分化:「紳士録」データによる「上からの中流化」過程の分析」、『社会科学』(慶應義塾大学日吉紀要)第4号(1993年3月)、1-77頁。 (本文に戻る)
(4) 現在は、東急田園都市線として路線名を統一。 (本文に戻る)